映画『gifted/ギフテッド』は、天才的な才能を持つ少女と、その子を育てる家族の物語。
でも、実際にギフテッドの特徴にバッチリ当てはまる子を育てている親としては「ちょっと違うかも…」と思う部分も。
この記事では、映画の見どころと、リアルなギフテッド育児とのギャップについて語ります。

映画『gifted/ギフテッド』を観た親の本音
映画『gifted/ギフテッド』は、ギフテッドの少女・メアリーとその叔父フランクとの絆を描いた心温まるドラマです。(2017年にアメリカ合衆国で公開されたドラマ映画)
才能ゆえの葛藤、教育の選択、そして“普通”に生きることの難しさ──ギフテッド育児に関心のある人にとっては、まさに見逃せない作品です。私も今回、5年ぶり?に再度観ました。
私自身もギフテッドの可能性を持つ子を育てる親として、この映画には心を揺さぶられる場面がいくつもありました。でも同時に、「リアルとはちょっと違うな…」と感じた部分もあります。
この記事では、映画『ギフテッド』の描写と、実際のギフテッド育児の違いを正直に語ってみたいと思います。
映画『ギフテッド』のあらすじと魅力
7歳の少女メアリーは天才的な数学の才能を持つギフテッド。
彼女を育てるのは、元大学教授で現在はボート修理の仕事をする叔父・フランク。
「普通の子どもとして育てたい」と願うフランクと、メアリーを特別な教育機関に入れようとする祖母。
才能と幸せのバランスを巡って、家族が揺れる姿が描かれます。
主演のクリス・エヴァンスと子役マッケナ・グレイスの自然な演技が光り、
ギフテッドという言葉の裏にある感情のドラマを丁寧に描いた秀作です。
映画とリアルのギフテッド育児の違い
突出した才能の描写は一部に過ぎない
メアリーは、天才的な数学力を持ち、大学レベルの問題をすらすら解きます。
確かに、ああいった“突出型”のギフテッド児は存在します。
でも、現実の多くのギフテッド児はそこまで“飛び抜けた”存在ではありません。
むしろ、知的好奇心が強い一方で感覚過敏や社会性の課題を抱えていたり、
一部の分野にだけ強い「アンバランス型」のほうが多い印象です。
映画はあくまで“ギフテッド像の一例”であって、すべての子があのように表現できるわけではありません。
天才として扱われることへの違和感
映画では、周囲がメアリーを「才能ある子」として扱い、教育の方向性を巡って大人たちが争います。
でも現実は──
- 「空気が読めない子」
- 「こだわりが強い子」
- 「協調性がない子」
…といった評価をされ、才能として見てもらえないケースのほうが多いのです。
社会的にギフテッドへの理解がまだ進んでいない現状では、
「育てにくい子」とラベリングされてしまうことも少なくありません。
支援の選択肢の少なさ
映画の中では、「特別な教育機関への進学」や「天才児のための専門家」など、
“選べる支援”がいくつも提示されます。
けれど日本では、そういった支援体制はほとんど整っていないのが現実です。
自治体にもよりますが、「ギフテッド」という言葉自体が理解されないこともあります。
学校や教育委員会、専門機関に相談しても、
「とくに問題ありません」「様子を見ましょう」で終わってしまうことも多く、
親が一人で悩みを抱えるケースが非常に多いと感じています。
普通に生きる ことのリアル
映画のテーマは、「才能を活かす」か「普通に生きる」か、という二択のように描かれています。
けれど実際には、
「普通の学校に行きながら、家庭で特性に合わせたサポートをする」
「不登校や在宅教育という形で“その子らしい生き方”を模索する」
など、もっとグラデーションのある対応が必要です。
子どもは映画の登場人物のように分かりやすくは動きませんし、
才能の発現や心の安定には、環境と時間が必要だと日々感じます。

映画『gifted/ギフテッド』この映画が与えてくれたもの
現実とは違う部分も多いですが、
この映画が与えてくれたものも、確かにありました。
「この子には才能がある。でもそれ以上に、人として大切に育てたい」
そう思ってくれる大人(=フランク)の存在に、私自身が救われた気がしました。
「できること」が突出している分、そこにばかり目が行きがちなギフテッド育児の中で、「できないこと」も余計に目立ってしまう。
「子どもが幸せに生きるって、どういうことだろう?」と改めて問い直す時間をくれた──
そんな作品だったと思います。
映画『ギフテッド』は実話なの?モデルになった人物は?
映画『gifted/ギフテッド』は、一見すると実話をもとにしているようなリアリティのあるストーリー構成ですが、実際にはフィクション(創作)作品です。脚本はトム・フリン(Tom Flynn)によるオリジナルで、特定の実在人物をモデルにしたわけではありません。
とはいえ、映画で描かれているような「突出した才能を持つ子ども」と「その子をどう育てていくか悩む大人たち」の構図は、現実のギフテッド育児にも非常に近いものがあります。
たとえば、アメリカではギフテッド教育の制度が整っている地域が多く、実際にメアリーのような高い知的能力を持つ子が、年齢に関係なく大学の講義を受ける事例も存在します。
また、「才能を伸ばすこと」と「子どもらしく生きること」の間で葛藤する保護者の気持ちは、まさにリアルなギフテッド育児で多くの親が抱える悩みでもあります。
つまり『gifted/ギフテッド』は、実話ではないけれど、多くの親子に共通する“心の実話”と言っても過言ではないでしょう。
National Association for Gifted Children(NAGC) – What is Giftedness?
👉 アメリカのギフテッド教育専門機関による「ギフテッドとは何か?」の定義と指針を掲載しています(英語)
ギフテッド育児のあるあると共感ポイント
映画では、ギフテッドの子どもは「特別な才能を持つすごい存在」として描かれていますが、リアルなギフテッド育児はそんなに華やかなものではありません。
ここでは、映画では描かれなかった“あるある”をいくつかご紹介します。
こだわりが強すぎて、些細なことが大事件に
- シャツのタグがチクチクするだけで大号泣
- 宿題の1問の言い回しが納得できず、手が止まる
高い感受性や認知の鋭さゆえに、ちょっとした違和感でも大きなストレスになることがあります。
「できて当然」と思われるプレッシャー
- 周囲から「なんでもできるんでしょ?」と期待される
- ちょっと苦手なことがあると「どうしたの?」と逆に驚かれる
得意な分野と苦手な分野の差が大きい“アンバランスさ”がギフテッド児の特徴でもあります。
社会性でのつまずきが目立ちやすい
- 同世代の子と話が合わない
- 「正しさ」を貫きすぎてトラブルになる
映画では描かれなかった“浮きやすさ”や“孤立しやすさ”は、現実では多くのギフテッド児とその親が直面しています。
これらの“あるある”を通じて伝えたいのは、ギフテッド育児は決して「羨ましがられるだけのもの」ではないということ。
子どもの本質を理解しようとする姿勢こそが、ギフテッド育児においてもっとも尊い営みなのだと思います。

ギフテッドはどこで視聴できる?
映画『gifted/ギフテッド』は以下の動画配信サービスで視聴可能です(※配信状況は随時変更される可能性があります)。
- Amazonプライム・ビデオ(レンタル・購入対応)
- U-NEXT(ポイント視聴)
- Netflix(※一時的に配信終了している可能性あり)
- Apple TV(有料レンタル)
- TSUTAYA DISCAS(DVD宅配レンタル)
特にAmazonプライムでは、字幕版・吹替版の両方が選べるため、英語が苦手な方やお子さんと一緒に視聴する場合にも適しています。
また、DVDでのレンタルを希望する方には、TSUTAYA DISCASの宅配レンタルも便利です。ネット環境が不安定な地域でも安心して楽しめます。
親子で視聴する場合は、冒頭に少し難しい数学の描写があるため、あらかじめ簡単な背景や人物相関図を共有しておくと、子どもも理解しやすいかと思います。
ギフテッドの映画は他にもある?
映画『gifted/ギフテッド』のように、「ギフテッド=天才児」のストーリーは印象的ですが、それ以外にもギフテッドや“突出した才能と生きづらさ”を描いた映画はたくさんあります。
ここでは、特におすすめの関連映画をいくつかご紹介します。
🎬 代表的なギフテッド関連映画
- 『A Brilliant Young Mind(邦題:僕と世界の方程式)』
数学に才能を持つ自閉スペクトラムの少年が、国際数学オリンピックを目指す中で成長していく物語。感覚過敏や社会性の課題がリアルに描かれており、ギフテッド児の“繊細さ”にも焦点が当たっています。 - 『Searching for Bobby Fischer(ボビー・フィッシャーを探して)』
チェスの天才少年が、社会や親との葛藤の中で自分の道を見つけようとする姿が描かれる作品。才能を“競争の道具”にしない教育の在り方を問う物語です。 - 『August Rush(奇跡のシンフォニー)』
音楽の天才である少年が、自分の才能を手がかりに家族を探していく感動作。知能ではなく“芸術的ギフテッド”という視点から、才能の多様性を描いています。 - ドキュメンタリー『2e: Twice Exceptional』
ギフテッドでありながら発達障害などを併せ持つ“2e”の子どもたちを追ったリアルな記録映像。教育現場での対応の難しさや、子どもたちの内面に深く迫ります。
これらの作品は、「天才ってすごいね」という一面だけでなく、
- 社会とのギャップ
- 家族との葛藤
- 才能と“ふつう”の狭間で揺れる姿
といった、ギフテッドにまつわる“目に見えにくい葛藤”に光を当てています。
映画をきっかけに、自分の子どもや教育への見方が少し変わるかもしれません。
文部科学省「特別な教育的ニーズのある児童生徒への対応」
👉 日本におけるギフテッド(特別な教育的ニーズ)への理解と支援についての政策情報を確認できます。
映画『gifted/ギフテッド』とリアルな育児のまとめ
ギフテッド育児は映画のようにドラマチックではありません。
地味で、苦しくて、答えの見えない日々の連続です。
でも、だからこそ
映画『gifted/ギフテッド』のように、
「この子の幸せを最優先に考えたい」と願う親の存在は、何よりも尊く、力強いものだと信じています。
もしあなたが今、同じように悩んでいたら──
一人じゃないよ、と伝えたくてこの記事を書きました。
あなたとあなたのお子さんにとっての“その子らしい道”が、
見つかりますように。
最後まで読んでくれてありがとうございました!