息子が「ギフテッド」と診断されると同時に、ASD(自閉スペクトラム症)の特性も持っていると分かり、いわゆる”2E(Twice Exceptional)”の状態であることが判明したのが約5年前。診断当初は混乱と不安でいっぱいでしたが、特性を正しく理解し適切に支援することで、息子の能力を最大限に引き出せるようになりました。
この記事では、アスペルガー(ASD)とギフテッドの共通点と違いについて、また具体的な支援方法を詳しく説明します。同じような悩みを抱える保護者にとって、この記事が一つの指針となれば幸いです。
この記事を読むとわかること
- アスペルガー(ASD)とギフテッドの違い
- 2E(Twice Exceptional)の子の支援方法
- 日常生活や学校での支援策
- 保護者の役割と専門家の連携方法

知的特徴の類似点と相違点
• 知的特徴の類似点と相違点 • 社会性や対人スキルにおける違い • 感情の敏感さとその影響学校や教育現場での課題の違い • 日常生活での行動パターンの違い • 2E(Twice Exceptional)の特性と支援の重要性
アスペルガーとギフテッドは、知的能力の面で一部共通点がありますが、その現れ方や学び方には違いがあります。
特徴 | アスペルガー | ギフテッド |
---|---|---|
集中力 | 特定のテーマに没頭し、細部にこだわる | 幅広い分野に興味を持ち、柔軟な学び方をする |
学び方 | 論理的に深く掘り下げる | 創造的で直感的にアイデアを生み出す |
応用力 | 細部を重視し、全体を見通す力が弱いことも | 全体を俯瞰し、創造的に応用する |
例えば、息子が恐竜に興味を持ったとき、アスペルガー的特性として恐竜の名前や生態を細かく記憶し、博物館のガイドのように話すことに没頭しました。一方、ギフテッド的特性としては、その知識を生態系全体の変化や進化の理論に応用する視点を持っていました。
社会性や対人スキルにおける違い
アスペルガーとギフテッドの子どもたちは、社会性や対人スキルの面で課題を抱えることがありますが、その理由は異なります。
特徴 | アスペルガーの課題 | ギフテッドの課題 |
非言語コミュニケーション | 表情やジェスチャーを読み取るのが苦手 | 同年代との話題が合わず孤独を感じることが多い |
会話スキル | 会話のタイミングが掴めない | 知的レベルの違いから、年上や大人と話すほうを好む |
対人関係の構築 | 共感を伝えるスキルが乏しい場合がある | 興味が異なるため、友人を作るのが難しい |
具体例として、息子は学校のグループ活動で他の子どもたちと協力する際、アスペルガー特性から会話の意図を誤解し、自分の役割に固執することがありました。簡単に言うと真面目過ぎるほど、言われたことを鵜呑みにしてしまうのです。一方で、ギフテッド特性により独自のアイデアを出して周囲を驚かせることもあります。
感情の敏感さとその影響
感情の敏感さは、アスペルガーとギフテッドの子どもたちに共通する特性ですが、表れ方が異なります。
特徴 | アスペルガーの感情反応 | ギフテッドの感情反応 |
ストレスへの反応 | 予定変更や予測不能な状況に強い不安を感じる | 社会的不正や倫理的問題に強く反応し議論を始める |
感情表現 | 感情のコントロールが難しく、突然爆発する場合がある | 感情を言語や行動で明確に表現し、他者に伝えようとする |
息子が感情的になったケースでは、ギフテッド特性として社会の不公平さに対して熱心に討論を始めることもありました。

学校や教育現場での課題の違い
学校環境において、アスペルガーとギフテッドの子どもたちが直面する課題はそれぞれ異なります。
課題 | アスペルガーの子ども | ギフテッドの子ども |
指示の理解 | 抽象的な指示を理解するのが難しい | 簡単すぎる内容に退屈し、集中力が続かない |
学習スタイル | 個別指導や具体的な補助が必要 | 挑戦的な教材や課題を求める |
社会的スキル | 同級生との協調が難しく、孤立することが多い | 興味が共有できる仲間が少なく孤独を感じる |
具体的には、息子が図工の時間に他の生徒に助けを求められたとき、自分のやり方を曲げられずそのまま黙り込んでしまうことがありました。ギフテッド特性が目立つ場面では、学校の課題が簡単すぎて退屈し、自主的に大学レベルの教材に手を出したこともあります。
日常生活での行動パターンの違い
日常生活では、行動パターンや特性の現れ方が異なるため、それぞれに合ったサポートが必要です。
特徴 | アスペルガーの行動 | ギフテッドの行動 |
日常のルーチン | 固定されたスケジュールを好み、変化を嫌う | 興味の対象が頻繁に変わり、幅広い活動に取り組む |
ストレス管理 | 予測不能な状況に直面するとパニックを起こしやすい | 自由な環境で創造的活動を楽しむ |
例えば、息子は毎朝のルーチンが突然崩れると機嫌が少し悪くなることがありますが、予定を前もって確認することで安心感を得ています。一方、ギフテッド的特性として、プログラミングに一日中集中する日々が多いです。
2E(Twice Exceptional)の特性と支援の重要性
2E(Twice Exceptional)の子どもは、アスペルガーとギフテッドの特性を併せ持つため、強みと課題が複雑に絡み合います。それぞれの特性が補完し合う場合もあれば、課題を複雑化させる場合もあります。そのため、個別に特性を理解し、特化した支援を提供することが重要です。
- 特性の複雑性:
例えば、息子は物理学のような論理的な分野で高度な理解を示す一方で、指示の理解や時間管理が苦手です。彼の才能を引き出すためには、弱点を補うサポートが必要でした。 - 支援の具体例:
- 強みを活かす環境作り: 学校では、得意なプログラミングを活かしたプロジェクトベースの課題を提案。家庭では科学キットやオープンエンドの課題に取り組ませました。
- 弱点への補助: 視覚的なスケジュールを作成し、活動を時間ごとに細分化して提示することで、日常生活の見通しを立てやすくしました。
- 成功事例:
息子は生物学が好きでしたので小学3年生の時に生物検定2級の試験を受けました。この合格は史上最年少での合格だったため、この体験は、彼の自己肯定感を大きく高めるきっかけになったと思います。 - 失敗から学ぶ教訓:
一方で、グループ活動での対人スキル不足から会話が出来ない事も多いです。これをきっかけに、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を始めることで、徐々に他者との関わり方を学んでいます。 - 専門家の活用:
発達心理士や教育専門家と連携し、息子の才能を活かす方法や社会性を補うための具体的なステップを模索。専門家のアドバイスに基づいて支援計画を調整することが、効果的な支援に繋がっています。

アスペルガー(ASD)とギフテッドの子どもを支援する具体策
日常生活のスケジュール管理と環境整備 感情面のサポート方法と心理的支援 学校での個別対応と教育プラン 専門家との連携とカウンセリングの活用 興味や才能を伸ばすための方法 保護者が持つべきマインドと心構え
支援方法は、日常生活、感情面、教育現場など多岐にわたります。以下に具体策を詳しく紹介します。
日常生活のスケジュール管理と環境整備例
- 視覚的スケジュールの活用: 一日の予定を視覚的に示すことで、不安を軽減し、予測可能性を高める。
- 具体例: ホワイトボードを使って1日の予定を書き込み、各時間帯ごとに色分けをします。例えば、学校、宿題、自由時間をそれぞれ異なる色で示すことで、次の活動が明確になります。また、カレンダーアプリを活用し、変更があれば通知が届くように設定する。
- 効果: この方法は、予定変更時の混乱が減り、自分で次に何をすべきかを把握できるようになります。
- 自由時間の確保: 興味のある活動に没頭できる時間を意識的に確保する。
- 具体例: プログラミングに興味を持った際には、関連するロボットキットやコーディング教材を購入する。これにより、自分なりに試行錯誤しながら楽しむことができるでしょう。
- 効果: 好きなことに集中する時間を設けることで、ストレスが軽減され、学習意欲も高まります。
感情面のサポート方法と心理的支援
- 感情の共有を促す: 子どもが感じていることを言葉にして表現する練習をサポート。
- 具体例: 怒りや不安を感じたときに、”何があったのか教えてくれる?”と質問し、安心して話せる環境を作る。また、感情カードを使って、自分の気持ちを選んで説明する方法も取り入れるのもいいですね。
- 効果: 感情を言語化することで、自分の気持ちを整理できるようになり、パニックを防ぐ手助けとなります。
- 専門家のサポート: 心理療法やカウンセリングを通じて感情コントロールを学ぶ。
- 具体例: 発達心理士による定期的なカウンセリングに通うことで、不安を感じたときに行う呼吸法やリラクゼーション法を学べる。
- 効果: 専門的な指導により、感情が高ぶった際にも自分を落ち着かせるスキルを身につけられる。

学校での個別対応と教育プラン
- 個別学習プラン(IEP)の導入: 子どもの特性に合わせた教材や学習方法を提案。
- 具体例: 学校の先生と協力して、子供の興味に基づいた課題(例: 数学では統計を使ったプロジェクト学習)を作成してもらう。
- 効果: 学習意欲が高まり、得意分野での成功体験が自信につながる。
- ソーシャルスキルトレーニング(SST): 対人関係のスキルを磨くプログラムを活用。
- 具体例: 放課後プログラムで、他の子どもたちと一緒に役割分担をする演習を通じて協力するスキルを練習する。
- 効果: グループ活動への抵抗が減り、他者と関わる自信を持つようになれる。
専門家との連携とカウンセリングの活用例
- 発達心理士や教育専門家との相談: 子どもに最適な支援方法を模索。
- 具体例: 月に一度、発達支援センターの専門家と面談し、最新の支援方法や改善案を取り入れる。
- 効果: 支援内容をアップデートすることで、お子様の成長に合わせた適切な対応が可能になる。
- 定期的な評価: 子どもの発達や状況に応じて支援内容を見直す。
- 具体例: 学校や家庭での行動観察を記録し、3か月ごとに専門家とレビューを実施する。
- 効果: 支援の成果を確認し、改善すべき点を迅速に特定できます。
興味や才能を伸ばすための方法
- 専門的な教材の提供: 子どもの興味に基づいた教材を準備。
- 具体例: 息子が天文学に興味を持ったとき、星座早見盤や天体望遠鏡を購入しました。さらに、科学館のイベントにも積極的に参加しました。
- 効果: 実体験を通じて興味が深まり、さらなる学びへのモチベーションが向上しました。
- クリエイティブな活動の推奨: アートやプログラミングなどの活動を取り入れる。
- 具体例: 自由に絵を描いたり、音楽を作曲したりする時間を設ける。デジタルツール(例: タブレット)を活用することで、創造性を刺激できます。
- 効果: 自己表現の場を持つことで、自己肯定感が向上するきっかけになります。

保護者が持つべきマインドと心構え
- 子どもの可能性を信じる: 特性を理解し、その良さを引き出す姿勢を持つ。
- 具体例: 息子が苦手な課題に取り組む際も、「できるよ」と声をかけ、少しずつ達成感を得られるような支援をしています。
- 効果: 保護者が信じる姿勢が、子どもの自信や前向きな行動を引き出します。
- ストレス管理: 保護者自身がストレスをため込まず、前向きにサポートすることが重要。
- 具体例: 自身のストレス解消のためリラクゼーションを取り入れるようにしています。また、私自身が相談できるコミュニティを活用しています。
- 効果: 保護者が心の余裕を持つことで、子どもへの支援がよりスムーズになる。
関連記事 👉アスペルガー症候群(ASD)やギフテッドの特性が、不登校につながるケースもあります。詳しくは、不登校 世界ランキング【2023年版】 で日本と海外の現状を比較しています。また、2E(Twice-Exceptional)の特徴と対応方法 も併せてご覧ください。
アスペルガー(ASD)とギフテッドの違いを理解するの総括
アスペルガー(ASD)とギフテッドの特性を理解し、子どもに合った支援を提供することで、彼らの可能性を引き出すことができます。同じように悩む保護者の方々にとって、この情報が参考になれば幸いです。どの子どもも無限の可能性を持っていますね。この記事のポイントをまとめました。
アスペルガー(ASD)とギフテッドには共通点と違いがある
2E(Twice Exceptional)は特性の複雑さが課題を引き起こす場合がある
特性を理解し、強みを活かすことが支援の鍵となる
視覚的スケジュールは日常生活の見通しを立てるのに有効である
自由時間を確保し、興味を追求できる環境を作ることが重要
感情の共有を促し、言語化することでパニックを防ぐ手助けができる
専門家のサポートを活用して感情コントロールを学ぶことが効果的
学校での個別学習プラン(IEP)は特性に応じた学びを提供できる
ソーシャルスキルトレーニング(SST)で対人スキルを向上させる
専門家との連携により、適切な支援内容を更新できる
子どもの興味分野を伸ばすために適切な教材や活動を提供する
クリエイティブな活動は自己表現と自己肯定感の向上に繋がる
保護者の信頼とサポートが子どもの自信を育む
保護者自身がストレス管理をすることで支援がスムーズになる
特性を活かした支援が、子どもの可能性を最大限に引き出す