オンライン授業が出席扱いになる背景と文部科学省の新制度を詳しく解説します。
高校オンライン授業が出席扱いになる背景とは?
近年、高校生の不登校が深刻な社会問題となっており、その数は年々増加しています。文部科学省の調査によると、高校生の不登校は年間約6万人以上にものぼり、そのうちの多くが中退や留年を余儀なくされているのが現状です。
背景には、コロナ禍による生活リズムの乱れや、人間関係、精神的な不調などさまざまな要因がありました。これまでは不登校の生徒が単位を取得するためには、通信制高校への転校しか選択肢がないケースも多く、「今の学校に在籍したまま学び続ける」ことが難しい状況だったのです。
そこで、文部科学省は「不登校でも安心して学び続けられる仕組み」として、オンライン授業の出席扱い制度を整備することになりました。これにより、今通っている高校に在籍したまま、オンラインで学び続けられる道が広がったのです。
文部科学省による制度改正のポイント
文部科学省は、2024年(令和6年)4月から施行されるこの制度で、次のような具体的な改正を行いました。
改正ポイント | 内容 |
---|---|
対象 | 全日制・定時制課程の高校に在籍する不登校生徒 |
単位認定 | オンライン授業で最大36単位(卒業必要単位74単位の約半分)まで認定 |
授業形態の条件 | 双方向型(ZoomやTeamsなど)のオンライン授業が原則対象 |
オンデマンド型の扱い | 原則対象外。ただし「課題提出」があれば36単位に含めることも可能 |
対象となる不登校の定義 | 病気や経済的理由を除く、年間30日以上の欠席者 |
この制度改正により、以下の点が大きなメリットとなります。
- 学びを途切れさせず、卒業資格を得られる
- 内申点や進学にもプラスになる
- 学び直しや復帰のタイミングを自由に選びやすくなる
一方で、「学習成果の確認」や「指導内容の記録」など、学校側の運用には一定のルールや手間も発生します。

令和6年4月施行!出席扱い制度の開始時期と内容
この制度は、令和6年4月(2024年4月)から本格施行されます。新年度から全国の高校が対象となり、校長の判断で出席扱いが可能となる点が大きなポイントです。
文部科学省の通知によれば、出席扱いとなる主な条件は以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
施行時期 | 2024年(令和6年)4月1日から |
対象者 | 不登校の高校生(全日制・定時制) |
対象授業 | 学校の授業計画に沿ったリアルタイム型オンライン授業 |
単位上限 | 36単位まで(卒業に必要な74単位の約半分) |
評価方法 | 学習状況の確認・課題提出・面接指導など |
出席扱いの対象となる授業の種類【視覚で理解】
授業形式 | 出席扱い | 備考 |
---|---|---|
双方向型(Zoom・Teamsなど) | ○ | 出席扱いの基本条件 |
動画視聴のみ(オンデマンド型) | × | 原則対象外(課題提出で一部可) |
プリント学習のみ | × | 出席扱い不可 |
このように、令和6年4月から高校でもオンライン授業が正式に出席扱いとなることで、多くの不登校生徒が「通えなくても学び続ける」道が開かれました。
今後は各高校ごとにルールが設けられ、保護者や生徒も積極的な情報収集と学校との連携が求められるでしょう。
出席扱いになるための要件と注意点
高校のオンライン授業が出席扱いになるためには、いくつかの明確な要件が定められています。単純に「家でオンライン授業を受ければいい」というものではないため、事前にしっかり確認しておく必要があります。
まず、文部科学省が示したポイントは、「学習成果の確実な確認」と「リアルタイム型のオンライン授業の実施」です。具体的には、ZoomやTeamsなどを使った双方向型の授業が基本となり、生徒の理解度や出席状況が先生にしっかり把握できる形で行われなければなりません。
以下は出席扱いとなるための主な要件です。
要件 | 内容 |
---|---|
リアルタイム授業の実施 | Zoomなどでリアルタイム配信し、生徒がその場で参加・発言できる形式 |
学習成果の確認 | 課題提出・小テスト・面談などで、きちんと学習したことが確認できる |
月1回程度の対面機会(推奨) | 完全な孤立を防ぐため、オンライン以外の接点を持つ工夫も必要 |
学校長の判断 | 最終的な出席扱いの可否は校長が決定する |
ここで特に注意したいのは、オンデマンド授業(録画授業を見るだけ)では原則出席扱いにならない点です。ただし、視聴後に課題提出をするなど、学習状況が学校に報告・確認できる仕組みがあれば、一部認められる場合もあります。
また、各学校によって「どういう形なら出席と認めるか」の運用は異なるため、必ず事前に担任や学校と相談し、具体的な手続きを確認しておくことが大切です。
加えて、出席扱いになった場合でも、単位認定や内申点にどこまで反映されるかは、学習内容の充実度や取り組み姿勢にも左右されます。単なる「画面にいるだけ」では不十分なので、集中して参加し、課題提出や先生とのやりとりにも積極的に取り組むことが求められるでしょう。

全日制・定時制でも適用!どの高校が対象?
今回の制度改正によって、高校の全日制・定時制どちらの課程でもオンライン授業が出席扱いとなる仕組みが整いました。これは不登校の高校生が、自宅にいながらも今の学校に在籍したまま学び続けられる大きなチャンスです。
対象となるのは、以下の通りです。
学校種別 | 対象 | 補足 |
---|---|---|
全日制高校 | 対象 | 進学重視の普通科高校や専門学科も含む |
定時制高校 | 対象 | 夜間や昼間に通うスタイルでもOK |
中等教育学校の後期課程(高等部) | 対象 | 6年一貫教育の後半3年間 |
特別支援学校の高等部 | 一部対象外 | 通信教育制度は別途規定あり |
つまり、地域や学校の種類に関係なく、ほぼすべての「高校生」が今回の制度の対象となります。ただし、「通信制高校」はもともと自宅学習が前提のため、この制度による変更は特にありません。
また、この制度は校長の判断で実施することが可能ですが、「すべての学校が必ず取り入れる義務はない」点も重要です。学校ごとの運用方針によっては、オンライン授業の活用範囲や出席認定の条件が異なる場合があります。
そのため、実際に利用する際は、以下の流れを確認しましょう。
- 学校の方針確認(オンライン授業が出席扱いになるか)
- 必要な手続き確認(申請書類や事前相談)
- 実施する授業形式の確認(双方向型・課題提出の有無)
- 単位認定のルール確認(最大36単位まで)
このように、全日制・定時制を問わず広く対応する一方で、具体的な運用は各学校ごとに異なる可能性があります。早めの情報収集と、学校との綿密な相談が成功のカギになるでしょう。
高校オンライン授業 出席扱い 文部科学省が示す条件と影響
オンライン授業による出席扱いが高校生活や進路に与える影響を解説します。
オンライン授業の対象は不登校生徒?定義と範囲
今回の制度改正によるオンライン授業の出席扱い対象は、主に不登校生徒や病気療養中の生徒など、特別な事情で登校が難しい生徒です。特に不登校生徒については、文部科学省が「心理的・情緒的・身体的、または社会的な要因により、年間30日以上欠席した者」と定義しています。
ただし、年間30日未満でも「不登校の傾向が見られる生徒」は対象となる場合もあります。学校や自治体の判断で対象の範囲が異なることもあるため、事前に学校へ相談することが大切です。
また、スポーツや芸術活動など特別な事情がある場合も対象になる可能性があります。対象となる条件は柔軟化されているため、お子さんの状況に合わせて活用できる制度といえるでしょう。

最大36単位まで取得可能!卒業単位への影響
今回の制度改正では、オンライン授業で最大36単位まで取得可能となりました。これは高校卒業に必要な74単位の約半分に相当します。
この制度を使うことで、不登校生徒でも卒業に必要な単位を確実に確保しやすくなります。万が一、長期間登校できなくなった場合でも、学びの継続が可能になる点が最大のポイントです。
ただし、36単位を超える部分はオンライン授業では認められないため、残りの単位は別の方法で取得する必要があります。卒業後の進路に不安を残さないためにも、計画的な単位取得の確認が必要です。
文部科学省が求める「学習成果確認」の重要性
オンライン授業を出席扱いとするためには、学習成果の確認が最も重要なポイントになります。これは単に授業を「受けた」だけではなく、「学習した成果を学校が把握できる形で残す」ことが求められます。
具体的には、
- 課題の提出
- 小テストの実施
- 教員との面談やフィードバック
などが必要です。こうした取り組みにより、学校側は「きちんと学んでいる」と判断し、出席扱いとするわけです。
成果確認が不十分だと、出席にはならず単位取得もできない可能性があるため、特に重要なポイントとなります。
内申点や進学への影響は?出席扱いのメリット
オンライン授業を出席扱いにできれば、最大のメリットは内申点や進学への悪影響を防げることです。高校では欠席日数が内申書に記載されるため、不登校が続くと進学や推薦に不利になるケースもあります。
しかし、この制度を活用すれば「自宅にいても出席」と記録されるため、欠席扱いによる評価の低下を防げます。特に高校入試や大学推薦など、出席日数が重視される場面では非常に大きなメリットです。
子どもの将来の選択肢を狭めないためにも、しっかり活用したい制度といえるでしょう。

モデル校の指定と今後の運用・拡大の可能性
文部科学省は2024年度からモデル校を指定し、運用をスタートさせます。これはオンライン授業による不登校対策を全国へ広げるための試験的な取り組みです。
モデル校では、実際の運用方法や課題を検証し、将来的には全国の高校へ制度を拡大する方針とされています。今後の動きによっては、さらに利用しやすい制度になる可能性もあります。
保護者としては、お子さんの通う学校がモデル校かどうかを確認し、最新の情報をチェックしておくと安心です。
学校・保護者が準備すべきことは?必要な手続きと書類
この制度を利用するためには、学校と保護者が事前にしっかり連携することが必要不可欠です。以下のような手続きや準備が求められるでしょう。
準備項目 | 内容 |
---|---|
学校への相談 | 制度の運用方針や必要書類を確認 |
申請書類の提出 | 学校指定の申請書、理由書などの提出が必要 |
学習計画の作成 | オンライン授業のスケジュールや成果確認方法を明確に |
課題提出・成果報告 | 定期的に学習状況を報告し、成果を確認してもらう |
保護者がサポートする場面も多いため、しっかり準備して進めましょう。
よくある疑問①:動画視聴だけでは出席扱いにならない?
その通りです。動画視聴だけでは出席扱いにはなりません。文部科学省は「双方向型のリアルタイム授業」を原則としています。
動画視聴後に課題提出を行い、学習成果を示せれば部分的に認められる場合もありますが、これは学校ごとの判断になります。必ず事前に確認しましょう。
よくある疑問②:通信制高校との違いは?
通信制高校は、最初から自宅学習が前提の教育課程です。一方、今回の制度は「全日制・定時制の高校」に通う生徒が対象で、オンライン授業を出席扱いにする仕組みです。
通信制高校はいつでも編入できますが、今回の制度を活用すれば「今の学校に在籍したまま卒業を目指せる」のが大きな違いといえるでしょう
高校オンライン授業 出席扱い 文部科学省による制度改正のまとめ
この記事のポイントをまとめました。
高校のオンライン授業が令和6年4月から出席扱いになる
対象は全日制・定時制の不登校高校生
最大36単位までオンライン授業で取得可能
双方向型オンライン授業が原則で出席扱い
オンデマンド型は課題提出があれば一部認められる
文部科学省が「学習成果の確認」を重視している
出席扱いになると内申点や進学への影響が少なくなる
モデル校で運用開始し、全国展開を目指す方針
出席扱いの対象は年間30日以上欠席した不登校生徒
学校ごとに運用ルールや手続きが異なるため要確認
通信制高校とは異なり、今の高校に在籍したまま学べる
保護者のサポートと学校との連携が制度利用のカギになる